がんという病気は、生活習慣病という側面を持っています。
つまり生活の見直しから、ガンの予防につなげていくことが可能ということです。
ガンの改善を考えるときにもこの視点は大切です。
ガンを予防するための食事療法については人の分野で情報が豊富ですが、その知識の多くは犬や猫にも応用できると考えております。
写真提供:もえぎの動物病院(横浜市青葉区)
ガンの食事療法の知識
まず最初にお伝えいたしますが、「これだけを食べていれば大丈夫」、「これさえ抜けば大丈夫」という食事は残念ながらありません。
さまざまな原因が絡み合って病気になることを考えれば、1つの対策だけでは足りないということがおのずと見えてきます。
ここを勘違いしてしまうと、食事療法が硬直化して柔軟な軌道修正ができなくなります。
1つのことを徹底するよりも、少しずつでも複数の工夫を取り入れたほうが、相乗的なメリットを得られて効果的でしょう。
さまざまな視点を持つことが、ご愛犬ご愛猫にあったガンの食事療法となるでしょう。
以下に、弊社がペットの健康相談でアドバイスしていることを書き出してみます。
実際にはご愛犬ご愛猫の好みや、いま与えている食事、いままでに食材を与えた経験、便の様子などをお聞きしてもっと具体的にアドバイスしております。
基本的には偏食によるデメリットが生じないように、ある程度のバランスの中に収まるように考えていきます。
栄養面のアプローチばかりでメンタル面を軽視すると上手くいかないことが多いように思います。
100点を目指すより80点くらいをコンスタントに取れる食事のほうがさまざまな点で良いとも考えています。
肉類、とくに加工肉を多く与えすぎない
加工肉が大腸がんのリスクを高めてしまう可能性が人の分野で指摘されています。
他のガンについてはっきりとわかっていませんが、弊社ではあまり良くないことだと考え、与え過ぎと思われる場合は控えめにするようアドバイスしています。
加工肉と言うとソーセージやベーコンが思いつくかもしれません。
ペットであれば、まずジャーキー類を与えすぎないようにしたほうが良いです。
加工肉と考えれば、ドッグフードやキャットフードもその部類に入ってきます。
ですが一般的なペットフードではタンパク質20%~30%であり、加工肉のとり過ぎになっていると一概には言えないでしょう。
後述する半手作り食のアイデアによって、食材のトッピングで食事のタンパク質の割合をチューニングすることも可能です。
「肉類を多く与えていると酸性体質になりやすく、ガンと戦うときに不利な材料になる」とも、獣医師の先生から教わっています。
腸内環境の悪化なども考えられるため、精肉であっても与えすぎは良くないと考えています。
とはいいましてもタンパク質をやみくもに減らすのにも健康デメリットがあるため、代替する食品の1つとして高野豆腐をすすめることがあります。
糖質(炭水化物)を悪者にしない
がん細胞は糖質をエネルギー源としているため糖質を制限するようにと言われることがあります。
ですが、糖質制限を徹底するとガンが減るというデータはあまり見たことはありませんし、最近では逆に危険視する意見も出ています。
もしかすると机上の空論である可能性もあります。
そのうえで、糖分を与えすぎているようでしたら、控えめにしておきましょう。
甘いものに依存してしまったり、血糖値が高くなるほど糖分を与えていることは当然デメリットになります。
少量のお米やパン、芋類や果物類をお与えになること、弊社のアドバイスですぐに禁じることはありません。
ただ煎餅や、カステラ、どら焼きなどを与えすぎているなと感じるときは減らしてもらっています。
なお、がんになって味覚が変わったり、抗がん剤で味覚障害が起こってしまうためか、甘いものを欲するケースがあるように思えます。
ペットフードには表示されていないことも多いのですが、実際には糖分を含んでいます。
フードによって差があることもふまえ、まず問題になることはないというのが私たちの考えです。
糖質制限の徹底から、炭水化物を抜くことになっていまうとどうしても肉類が増えがちです。
すると腸内環境の悪化から免疫力を低下させやすくなります。
がん予防を考えるときの免疫力低下は、本末転倒となるため気をつけましょう。
お時間がありましたら、こちらも併せて読んでみてください。
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すこしまえから、ペットのあいだに糖質制限が流行っています。 弊社ではペットの食事の相談を受けることがありますが、なかでも糖質制限についての相談が少なくありません。 「がんのときには糖質の少ないフードに ...
油のバランスを考える
油(脂質)は、与えすぎることにも、控えすぎることにもデメリットがあります。
油については、量というよりも質を考え、「良い油」を不足させないように食事に加えていくことをアドバイスしています。
体に必要な油としてオメガ3系オイル(ω-3)とオメガ6系オイル(ω-6)が知られていますが、多くの場合でオメガ6系オイルが多すぎてバランスを崩しています。
そのバランスの乱れが病気につながると考える先生方がいらっしゃり、私たちも同意見です。
オメガ6系オイルは通常のフードから十分に摂れていると思いますので、オメガ3系オイルを加えるようにすると良いでしょう。
なかでもEPAやDHAというオイルは動物にとって健康メリットが多く、魚類から摂ることをおすすめします。
なお亜麻仁油やエゴマオイルに含まれるαリノレン酸もオメガ3系オイルに分類され、体内でEPAやDHAに変換されると言われていますが、ダイレクトにEPAやDHAを与えたほうが確実でしょう。
甲殻類のオイルについては不明点があることから、犬猫たちへの安全性から魚由来のオイルが良いと考えています。
発酵食品を与える
発酵食品を与えるのは、腸内の善玉菌を増やし、腸内環境をより良い状態にすることが免疫力を高めやすいと考えられるからです。
弊社では、よく「ひきわり納豆」をおすすめしていて、多くの方が続けてくれています。
どうしても納豆が苦手という場合は、やはり大豆の発酵食品である「豆乳ヨーグルト」をおすすめしています。
発酵食品の良さは、そのままの形で与えることにあります。
菌だけを与えたり、含まれる酵素だけを与えることではありません。
ミネラル不足に気をつける
体が必要とするミネラルは必須ミネラルと呼ばれ、ナトリウムや、カルシウム、カリウム、マグネシウムなどがよく知られています。
ですが微量ながら必要なミネラルとして、亜鉛や、銅、セレン、マンガンなども必要です。
セレンが欠乏していると免疫は正しく働けないと言われ、加工食品が多かったり、偏食では気をつけるべきと考えています。
マンガンと聞けば電池の材料を思い出すかもしれませんが、やはり健康を保つために欠乏させてはいけません。
それらを微量のミネラルを適切に補給するためにどのような食材が良いのか、はっきりわかっていない部分があるのですが、海産物を加えて食事のバランスを取っていくと良いと思います。
塩分は多く与えすぎない、減らしすぎない
塩分は健康に生きるために、すべての動物にとって必要なミネラルです。
そのため通常はペットフードにも塩分は適切に入れられています。
日本には塩分を悪者にする風潮があり、犬猫に塩分を与えてはいけないと思い込んでいる飼い主様がたまにいらっしゃいます。
悪いのは塩分のとりすぎであり、塩分自体が不要と考えてしまうと健康度を下げてしまう可能性があります。
ただし犬猫たちは、私たち人間と違って汗をかきません。
つまり体温調節で塩分を消費しないために、それほど塩分を必要としないと考えています。
食事は美味しくするべき
人よりも本能で生きる動物たちにとって、食べることは大きな喜びです。
その喜びである食事があまり美味しくなかった場合、彼らの欲求の満足度は低下してしまうでしょう。
良い食事を追い求めすぎるあまり、味をないがしろにしていると、食事が楽しくならないだけでなくストレスに思われるかもしれません。
ストレス発散として食事が役立っていたのであれば、さらにストレスを抱え込むことになるでしょう。
こういった良くないメンタル状態について、弊社では免疫力を高めようとするときの強いブレーキになると考え、せっかくの取り組みの効果をキャンセルしてしまうとして気をつけてもらっています。
味も免疫力をアップさせる大切な要素であると考えてください。
リンゴや、サツマイモを少し入れるとすごく喜んでくれるのであれば、むやみに抜くべきではないと思います。
食事を与えるときは、飼い主も楽しむ
人は食事の味にこだわりますが、それは犬でも猫でも基本的には同じです。
また味というものは、そのものの味だけでなく、食べる場所の雰囲気、一緒にいる仲間の雰囲気なども加味されて、美味しさがアップしていきます。
ゆえにペットに食事を与えるとき、私たちも楽しんだほうが良いのです。
もっと言いますと、「これはスペシャルな食事なんだよ」「元気が湧いてくるよ」と声掛けしてみてください。
「免疫力がよろこぶよ!」「腸内環境が良くなるよ!」でも良いです。
言葉がわからない動物に暗示の効果(プラシーボ効果)は無効と考えている人も多いかもしれませんが、そのようなことはありません。
プラシーボ効果が得られにくいのは、疑うことを覚えた人間の方であり、純粋なペットたちにはかなりよく効くのではないでしょうか。
かけた言葉の意味が理解できなくても、飼い主の表情、声のトーン、体臭までも判断材料として、「これは良いものだ!」とわかるはずです。
食事を用意するときの飼い主の気持ちは、魔法のスパイスにもなれば、間違ったスパイスにもなるということです。
半手作り食というアイデア
食事を変えていこうとするとき、多くの方は、新しいドッグフード(キャットフード)を探しはじめると思います。
もしくは、覚悟を決めて完全手作り食にしてみようと考えるかもしれません。
でも、もし食べてくれなかったらどうしよう。
体に合わなかったらどうしよう?という不安はつきものです。
たしかにガラッと食事を変更してしまうときには、上記のようなことが起こりがちです。
そういったことから、新しいペットフードか、手作り食か、の二択だけでなく、もう1つの選択肢として弊社では「半手作り食」というアイデアをベースに、みなさんにアドバイスしています。
半手作り食では、使い慣れたフードをパワーアップさせることを目的にしています。
完全手作り食ももちろん悪くありません。
ですが、ついつい100点満点を狙ってしまいがちで、もしかするとペットにも飼い主にも不安や、ライフスタイル上の負担がかかってしまうかもしれません。
いまのフードに食材を1~3個トッピングする半手作り食であれば、緻密な計算もいりませんし、何よりも簡単で楽なので続けやすいといったメリットがあります。
ペットフードによる栄養バランスを活かしつつ、食事に変化を与えられ、かつ追加する食材によるメリットを得ていくことが可能となるでしょう。
はじめての食材を与えるときに心配はつきものですが、多くの手作り食の先輩方がいます。
たまに手作りをしている人も含めれば、おそらく100万人以上の先輩方がいます。
そして先輩方がよく使っている食材は、かなり安全だという認識で良いはずです。
そもそもすべての食材は、厳密に言えば良い面もあれば、良くない面もあります。
それらを上手に組み合わせて80点くらいを狙っていくマインドでまいりましょう。
まだ人の分野でさえ明らかにされていない「完璧な食事」を狙い続けていると、いつかきっと心が折れてしまいます。
もちろん個体差がありますから、与えたあとはよく観察することが大切です。
迷われたときはアドバイスいたしますので、気軽にご相談ください。
半手作り食のレシピの一例
このページの写真は、もえぎ野動物病院のワンコさんたちの食事です。
半手作り食の参考なればと思って掲載させていただきました。
実際にはここまで食材を揃えなくても良いと思いますが、これを調理後に冷凍小分けにしているので、意外と日々の手間にはなりません。
こんな形で煮ています。
水を多くすれば、あとで水分多めの食事になります。
お好みで調節してください。
調理が終わったら冷ましてから凍らせます。
製氷皿を使うと、冷凍庫分けにとても便利です。
いろいろな大きさの製氷皿が売られていますので、与える量によって選んでください。
凍るとこんな形で取り出せます。
お気に入りのペットフードに凍ったまま乗せてください。
室温での自然解凍だと少し時間がかかりますが、楽に完成するのでおすすめです。
美味しさも免疫アップの大切なポイントです。