「犬や猫の気持ちがわかれば良いのに。」
治療で悩んでいるときや、フード選びで迷っているときなど、そう考えたことのある飼い主さんは少なくないでしょう。
愛犬愛猫の体調不良などで、動物病院の力を借りたいとき
「受診したほうが良いかな?でも高齢だし、通院がすごくストレスみたいだし、本人は辛いかもしれない。」
本人の気持ちがわからないまま受診。
すっきりするどころか迷いが増えてしまった。
人の場合なら、たいていは本人が自覚症状を訴え、病院に行くべきかどうかを自分で判断することができます。
ところが動物の場合は飼い主さんが判断しなくてはなりません。
どうしたら良いですか?と相談をよく受けます。
判断材料となる情報提供のあと、それでも決めかねる飼い主様にあえてこのように尋ねることがあります。
「判断に迷うときこそ獣医師に診てもらうべきだとも言えます。ところでご愛犬(ご愛猫)はどう考えていると思いますか?」
すると多くの飼い主様は、このように答えてくれます。
「本人が何を考えているかわからない。だって喋れないのだから。話せたらわかるのに。」
もっともな答えに思えます。
でも本当にそうなのでしょうか。
続いてこんなことを尋ねるときがあります。
「では獣医師の本当の気持ちは理解できますか?」
人は言葉を交わすことが出来ますが、お互いの気持ちを知ることは結構難しいことだったりします。
それを難しくしている理由は簡単で、人が(とくに日本人が)本音と建前を使い分けるためです。
獣医師だって人間です。
いつも、誰にでも心の奥底の扉をパカーンと開き、本音を話してくれるわけではありません。
職場でのコミュニケーション、上司とのやり取り、集会で意見を求められたとき
自分自身はいつも本音だけで話していますか?
職場でもサークルでも、大事な打ち合わせでも、本音を抑えて建前で話すことがあるはずです。
むしろ場の雰囲気を考えて、建前ばかりで終始することもあるかもしれませんね。
つまり、言葉が通じるからと言って本当の気持ちがわかるわけではないのです。
だから人の言葉をすべて真に受けて惑わされる、なんてことも起こるのですよね。
今は、印象を良くする方法や、相手にイエスと言わせるテクニックなど、そういったノウハウ本が出回っていて、余計に相手の本心がわかりにくくなっているかもしれません。
やっかいな時代です。
そう考えてみると、どうでしょう。
もしかして本音と建前を使い分けないペットのほうが、気持ちを理解しやすいのでは?
私はまさにそう思っています。
彼らは会話テクニック集やノウハウ本を読めません。
もしも飼い主に隠れて
「犬猫必見!飼い主をコントロールする7つの習慣」なんて本を読んでいたら
怖い・・・というか、感動するかな。笑
尻尾の角度やフリフリの速度、耳の向きや足の踏ん張り具合、目の輝き方
犬猫たちはダイレクトに気持ちを表現してくることがあります。
わかりにくいときもありますが、すごくわかりやすいときもあります。
わからないと決めつけてしまえば、飼い主力の成長が止まってしまいます。
ここは、わかると考えたほうが絶対に良いでしょう。
とは言いましても、犬猫たちには苦手なことがあって
「今ちょっと我慢すれば、将来大きなリターンが待っている。」
こういった中長期的な損得勘定がとても苦手です。
なのですべて彼らのペースで決めてはいけません。
たいてい快楽への道をまっしぐら!となります。
そうならないように飼い主さんの先読み思考でがっちりサポートするわけですね。
チクっとしても打ってもらったほうが良い注射
味はいまいちでも、いま食べるべきフード
無限に欲しいけれど、1日1個で我慢のおやつ
ご愛犬ご愛猫との絆を大切に、二人三脚(五脚かも)で、一緒に納得できる道を見出しましょう。
共に見出した答えの優先度は高めのはずです。
そのうえで専門家や詳しい人にアドバイスをもらうのは、大いにありです。
もし順番が逆だと、迷いが余計に増えたり、気持ちがブレブレになったり、道の分岐点が増えすぎるかもしれませんね。
私が思うに、きっとペットたちは飼い主の気持ちを理解できます。
あとは私たちが彼らの気持ちを理解できるかどうかです。
ちょっとくらズレても良いではないですか。
まずは、理解できるにきまってる!と信じることでしょう。