高濃度ビタミンC点滴療法とは、大量のビタミンCを血管内に投与する代替療法です。
人の治療として始まりましたが、犬猫たちも受けることができます。
ペットに使用するケースは、主にがんを患っているときで、QOL維持のため、そして治療の補助目的です。
ビタミンCというと身近に感じますが、実施には専用のビタミンCが必要で、また安全に実施するために前検査することが推奨されています。
そのようなことから、すべての動物病院で受けられるわけではありません。
がん細胞に対するビタミンCの働きかけ
ビタミンCと言いますと、その抗酸化力が広く知られています。
その抗酸化作用のメカニズムをもっと深く考えていくことで、がん細胞に対するビタミンCの働きが理解できます。
まずビタミンCの抗酸化作用は、自分自身が酸化されることで、体の酸化を防いでくれるというものです。
いわば身代わりになってくれるイメージです。
ビタミンCが酸化してしまうと、分解されて過酸化水素を発生させます。
この過酸化水素は、生体にとって悪影響を及ぼす、好ましくない物質なのですが、動物たちはこれを速やかに分解する酵素を備えています。
その酵素はカタラーゼと呼ばれています。
カタラーゼによって正常な細胞はダメージを受けずに済みます。
しかし、がん細胞はこのカタラーゼを持たないものが多いと考えられています。
つまり、がん細胞だけがダメージを受け、正常細胞には影響がない。
それが高濃度ビタミンC点滴療法の基本的なメカニズムです。
またビタミンCによるコラーゲン生成促進作用が、がん細胞に対して作用するとされ、実際にはいくつかのメカニズムが関わっていると考えられます。
とは言いましても、理屈と実際にはやはり差があります。
いままでに獣医師の先生方から症例を教わってきましたが、実際のところは高濃度ビタミンC点滴療法だけで大きな成果を期待することは難しいと言えます。
単独での反応性は高くない
実際に高濃度ビタミンC点滴療法を実施している獣医師の先生方に話を聞いてみますと、単独でがんを抑えるほどの結果はなかなか出ないとのことです。
学会でも同じように学びました。
あくまで他の治療を補強するためや、QOL(生活の質)を維持させることを目的に使われることがほとんどです。
ですので、基本的に単独で使われケースは少なく、他の治療や代替療法と組み合わせることになるでしょう。
そういった視点で見るとき、状況によっては使ってみる価値が出てきます。
そもそも多くの代替療法は、複数組み合わせていくことでメリットを高めあうものであり、そのような使い方が基本です。
また人と動物で反応性に違いがある可能性も考えられています。
人の場合はビタミンCを体内で合成しませんが、犬は少量ながら体内で作っています。
そういった差が、反応性の差として現れるのかもしれません。
週に2回程度が推奨されている
犬猫が高濃度ビタミンC点滴療法を受けるためには、一般的に動物病院に通う必要があります。
実施している獣医師たちからは、できれば週に2回、少なくとも週に1回は点滴を受けたほうが良いと聞いております。
治療は体に負担がほとんどなく、つらいものではありませんが、それでも通院すること自体が、犬猫たちに多少なりともストレスになるでしょう。
ある程度続けることが大切になってきます。
遠方のときは、期待するメリットと、ストレスなどとのバランスを考えて受けるようにしてください。
基本的に高濃度ビタミンC点滴療法は、長時間持続するタイプの治療ではありません。
間隔を広げすぎないほうが良いのは、そのためだと考えられます。
内服で対応することは難しい
高濃度ビタミンC点滴療法では、大量のビタミンCを比較的短時間で体内に入れます。
そのためビタミンCを内服で取らせることは、特に動物の場合は難しいことです。
またビタミンCの強い酸味はなかなか好まれず、けっこうなストレスになってしまうでしょう。
やはり点滴が適しています。
ただし、点滴の間の日に少量であってもビタミンCを飲ませることを推奨する獣医師もおります。
少しでも反応性が高めたいという期待からであり、その場合はゆっくり吸収されるタイプの製剤が良いそうです。
副作用について
まれなケースですが、高濃度ビタミンC点滴が体に合わない動物がいます。
検査を受けておくことで、前もってリスクがわかるそうですから、実際には体に合わないといった副作用はほぼ回避できます。
とは言いましても、基本的に安全性の高いことが特徴の一つです。
獣医師の話をよく聞いて、必要以上の不安を払拭して、リラックスして受けて欲しいと思います。
実施している動物病院
私の知り合いの範囲となってしまいますが、高濃度ビタミンC点滴療法を実施している動物病院を紹介させていただきます。
高濃度ビタミンC点滴療法
- アリスどうぶつクリニック(埼玉県入間市)
- まねき猫ホスピタル(大阪府守口市)
- もえぎの動物病院(神奈川県横浜市青葉区)
- アカシア動物病院(東京都小平市)
- かも動物病院(広島県東広島市)
- ペットメディカル久が原(東京都大田区)
- みなせ動物病院(京都府乙訓郡)
上記の病院でしたら、弊社からご紹介することもできます。
確立したマニュアルもありますが、動物病院によって工夫され、アレンジを加えて実施するところもあります。