ペットの食欲が低下すると、飼い主としてはどうしても健康が心配になってしまうものです。
「最近ずっと食欲がない」「好き嫌いが増えた」「においだけ嗅いでプイっとされる」
弊社にも、こういった健康相談がよく寄せられます。
食べてくれないとついつい焦ってしまって、嫌なイメージばかりが頭に浮かんできてしまいます。
でも、そういった飼い主の不安な気持ちが、ますますペットたちの食欲を低下させてしまっているかもしれません。
食欲低下については、その原因を切り分けて考えていくと良いでしょう。
「病気だから仕方ない」などとひとまとめにせず、少し考えてみると良い対策が見つかるかもしれません。
ペットにとっての食事は、私たちよりもずっと楽しくて、嬉しいもののはずです。
なんとかして原因を探ってあげたいところです。
ペットの食欲低下の考えられる原因
ペットの食欲が低下しているときは、まず少し冷静になって状況を把握してみましょう。
まず期間はどうでしょう。
1日だけか、3日続いているのか、ある時期からずっと続いているのか。
もちろん、期間が短いほど心配は少ないと言えます。
「ときどき食べないことがある」といった場合も、一週間のうち何回食べないのか、食べないと言っても少しは食べたのか、冷静に分析してみることも大切です。
できればメモなどで簡単に記録しておくと良いです。
動物病院に相談するときにも、メモがあれば正確に伝えることができます。
そのうえで、次のようなことを考えてみましょう。
食べるけど量が少ない、残す
食べているうちに何かつらくなってくることがあるのかもしれません。
例えば、食べているうちにだんだん口の中や歯が痛くなってくるといったことも考えられます。
何かの理由で胃が圧迫されているようなときも食事量が少なくなることがあるでしょう。
頭痛など、なにか不快な自覚症状があるときにも食事量が減ることがあるでしょう。
人と同じように、ペットにも頭痛はあると考えられますが、「頭がズキズキする」などと言わない限り、まわりの人には伝わりません。
選り好み(よりごのみ)が激しい
選り好みが激しいとき、好き嫌いが激しくなってきたとき、いくつかの原因が考えられます。
グルメになっている
健康なのに美味しいものばかりを選んで食べるときは、少しグルメになってきているのかもしれません。
食べないからといって、すぐに別の食事を出してあげているとグルメになりやすいと言えます。
「少し待っていれば美味しいものが出てくる」と犬や猫は学習してしまいます。
味覚異常(味覚障害)が起きている
味覚異常が起こると、味の感じ方が変わってしまいます。
いままで美味しかったものを不味く感じるようになり、食べなくなってしまいます。
一部の食事だけが不味くなると選り好みしているように見えます。
味覚異常はそれ自体が病気だととらえることもできますが、他の病気が原因で起こったり、薬の副作用で起こることも考えられます。
嗅覚異常(嗅覚障害)が起きている
犬や猫は、私たちよりも食事の臭いを大切にしています。
言いすぎかもしれませんが、味よりも臭いで美味しさを判定しているように思えます。
もし食事に口をつけず、臭いだけを嗅いでプイッと顔を背けるときは、嗅覚異常が起きているのかもしれません。
前述の味覚異常と同じように、他の病気や薬の副作用でも発生すると考えられます。
食べたあと、しばらくして吐き出す
消化器系の病気があるのかもしれません。
胃や腸が炎症を起こしているなど、なにか病気があるかもしれません。
人と同じように強いストレスで胃が荒れてしまうこともあるでしょう。
肝臓の病気や、胆管の病気、膵炎などがあって、食べ物をうまく消化できていない可能性も考えられます。
吐くことが多いのであれば、獣医師にしっかり伝えて、必要に応じて検査を受けてみるべきでしょう。
嘔吐物の色、便の様子も伝えるようにしてください。
食べたそうなのに、食べられない
胃が重い、胃がムカムカしているのかもしれません。
そういった自覚症状を言葉で表すことができない犬猫たちは、「お腹が減ってなにか食べたい。でもやっぱり食べられない」ということを行動で表現するしかありません。
口の中の炎症や、歯が痛くて食べられないことも考えられます。
肝臓や胆管の病気で黄疸が起こっているとき、腎臓が悪くて老廃物がたまっているようなときも、空腹なのに食べられないという状態になるかもしれません。
続くときは、やはり動物病院で診てもらいましょう。
飼い主の不安が伝わって、食欲が落ちる
ペットたちが餌を食べるとき、別に栄養バランスについて考えたりしません。
保存料や防腐剤、pH調整剤についての知識も持っていませんし、そもそも将来の健康を考えて食事を摂っているわけではありません。
彼らが安心して食べるのは、信頼している飼い主が出してくれた食事だからです。
そう考えたとき、私たちが自信を持ってニコニコしながら出す食事と、不安そうな顔で出した食事で、食いつきが変わってくると思いませんか?
少なくとも私は変わると思っています。
- 自信を持って出してあげると食欲アップ
- 不安そうに出してしまうと食欲ダウン
もちろん犬猫たちによって、性格の違いによってだいぶ差がある部分とは言えるのですが、実際のところ飼い主さんの不安さがペットの食欲低下の原因かもしれないと感じるケースが少なからずあります。
食欲低下の原因がご愛犬ご愛猫だけにあると考えるのではなく、「自分が変わってみたらどうだろう?」といった視点も場合によっては有効です。
同じ食事でも食べっぷりが変わってくるかもしれません。
とくに初めて与えるペットフードや、トッピング食材を「本当にだいじょうぶなのだろうか・・・」という不安な気持ちで与えると、相手に心配が伝わって警戒します。
きっと考えた末に与えると決めた食事のはずですから、「これを食べたら力がつくよ!もっと健康になるよ!」と自信を持って与えてあげましょう。
自分に置き換えて考えてみる
私たちがレストランで食事をするときのことを考えてみましょう。
ウエイターがあなたのもとに食事を持ってきます。
でもなんだか心配そうにしていて、食事を何回も見ては戸惑っている様子が伺えます。
小さな声で「お待たせしました・・・」と料理をテーブルに置かれて、あなたは食べることができますか?
たいていはすぐに食べないでしょう。
「どうしたの?何かあったの?理由を聞かせてくれる?」となりますよね。
私たちはウエイターの話を聞いて、問題ないとわかれば食べます。
でも喋れない犬猫たちはどうやって判断したら良いのでしょう。
彼らの判断材料は、信頼している飼い主さんの笑顔だったり、姿勢だったり、声のトーンだったり、体臭だったりするわけです。
これを利用すれば、食事をより美味しくしてあげることも、食欲をアップさせることもできるかもしれません。
もちろんすべて解決するとは言いませんけれど、もしうまくいったら、こんなに安全で安上がりな対策はありませんね!